ロゴ:人間塾〜人に出会い、人をつなぐ、人になる。〜

2021年スペシャル企画『人間塾と私』
塾生・修了生インタビュー

人間塾と私3.

森内勇登さん(修了生/第2期)

オリジンコーヒートレーダーズジャパン株式会社 取締役

森内勇登さん(修了生/第2期)

弱さや欠点をすべて見抜かれた、あの頃。

私が塾生だったのはもう8年くらい前になりますが、その頃から塾長と1対1で話せる月に一度の塾長面談がありました。塾長は一人一人の学生をよく見抜いていて、言われると痛い自分の課題に、正確で核心を突いた指摘と質問がズバスバと飛んできたものでした。「キミの話は薄っぺらい!ホンネでなくタテマエだけ。話すのが上手そうに見えるが、上手いのは実は、自分に都合よく論点をすり替えること。それによって、キミが真に向き合わなければいけないこと、やらなければいけないことから逃げている!」と。また、時によってその指摘は、「キミの立ち居振る舞いは、姿勢がよくない。もっと顎を引きなさい」といったところまで及びました。さらにある時は、「キミはガッツがあってアグレッシブで貪欲なところは、社会を渡るのに必要だが、一方で人間的な深みの必要性に自分で気づき、自分で率先して身に付けて行く必要がある」という言葉とともに、「美術館に行ってきなさい」という薦めをいただきました。大学では国際経済を学び、それまでまったく興味のなかった美術館でしたが、実際に絵に向かい合うと、驚くほど感じるものが多かったことを、今でもよく覚えています。ちなみに、塾長に指摘された品格のある立ち居振る舞いや優雅さを身に付けるべく、乗馬倶楽部に入って乗馬を始めたのもその頃でしたが、この乗馬倶楽部でのある出会いが、その後の私の人生を大きく変えることになるのを、この時はまだ知るよしもありませんでした。

森内勇登さん(修了生/第2期)

馬術の大会に出るために早朝から練習に励む様子

人のため、社会のため、自分のことは差し置いても。

大学時代から私は、上昇志向が強い人間だと思っていました。しかし人間塾と出合う前は、何のために上昇するのか、その目的が自分の中では曖昧で、ただ漠然と地位や財産や名誉といった、言ってみれば単なる欲でしかなかったのです。人間塾で学んだ最も大きなこと、それは親や社会から多くのものを与えられて、一流の教育を安全な場所で受けられた人間として、もはや私は、自分だけのことを考えることは許されないということ。それも「自分も他者も大事」というレベルではなく、自分のことを差し置いてでもまず誰かのため、社会のためにできることをする人になる義務があるということでした。思えばこれは、入塾直後のオリエンテーション合宿から繰り返しお聞きしていたテーマでしたが、入塾前はみじんも考えたことのないことで、初めは正直分かりませんでした。しかしその後の活動の中で、いろいろな角度から何度も何度も塾長の熱意ある説明をお聞きするうちに、確かにそうだなと自分から自然に思えるようになりました。そして、それは奨学金をいただけたうれしさ以上に、自分の中でもっともっといろいろな事を学びたいという真剣で前向きなモチベーションに変わったのです。

森内勇登さん(修了生/第2期)

鉱石輸入からコーヒー豆へ、人生が動いた日。

大学を卒業して、私は商社に就職しました。鉄鋼の原料をメインに扱い、日本の産業と社会を根幹で支えることに大きな魅力を感じました。志望を決めて塾長に相談にいくと、「人見知りせず、口も立つ商売人的なところが、キミに合っている」と背中を押してくれました。それから6年間、私は耐食性ステンレスの原料であるフェロクロームのプロとして、粉塵で顔を真っ黒にしながら、人間塾で学んだ「人のため、社会のため」をいつも胸に、鉱石を輸入し、保管し、届ける仕事に打ち込みました。後から思えば私はこの6年で、社会人として10年分くらいの勉強をさせていただいたと感謝しています。ところが、仕事がどんどん面白くなっていた4年目のある時、私の人生はそれまでまったく予想もしていなかった方向に動き出していきました。そのきっかけは、前に述べた乗馬倶楽部での一人のインド人との出会いでした。そのインド人の親しい知人に、インドで3代続くコーヒー農園を営むオーナーがいて、ビジネス拡大のために、いま日本やアジアでパートナーを探しているというのです。初めは単なる雑談でしたが、ある時、そのオーナーとオンラインで直接話す機会をいただいた際に、今までになかったような強く深い共感を得たのです。もともとインドのコーヒー産業は、現地の安い労働力を見込んでの、イギリス本国とヨーロッパにコーヒーを供給するための産業でした。ところが、このオーナーが利益の前に目指していたものは、もっと現地の人々が貿易の力をつけて、先進国と対等にビジネスするフェアトレードをコンセプトにしたコーヒー農園だったのです。それは、私の中で即座に、人間塾で学んだ「自分を差し置いても人のために」の使命と共鳴し、新しい何かが私の中でどんどん膨らみはじめました。

森内勇登さん(修了生/第2期)

より大きな裁量と現場で、もっと社会のために。

その新しい志に私を駆り立てたものは、商社勤務時代の実際の経験でした。海外でのフェロクローム鉱石の生産現場では、労働環境や汚染など安全性に疑問が残る環境の中で、家の経済を支えるために多くの子どもたちが駆り出されているのを何度も目にしていました。そこから利益を生み出している企業の一員として、このままキャリアを積み上げていってもよいのか疑問も感じていました。まさにそんなタイミングで、フェアトレードを前提とするコーヒー・ビジネスへの挑戦は、フェロクロームの現場ではできなかった「人のため」に貢献できる仕事だったのです。自分の裁量でできる大きなチャンスを取るか、取らないか、選択の時でした。面白くなってきていた商社での仕事と迷いもありましたが、8割くらいチャンスだと考えていた時点で、塾長に相談しました。すると、「やったらええんちゃう!私は応援する」という答えが返ってきました。さらに、「その想いがあれば、今までに培ってきたことは無駄にならない」と、再び力強く背中を押してもらいました。そのおかげで私は、人間塾での学びを実践するため、さらに大きな志へと歩み出すことができたのです。

森内勇登さん(修了生/第2期)

世界各国の農園から輸入されたコーヒー生豆を倉庫にて小分けする様子

仲野塾長は、私の「一生のメンター」です。

2019年5月28日、私はオリジンコーヒートレーダーズジャパン株式会社を立ち上げ、取締役としてフェアトレードを前提としたコーヒーのビジネスをスタートしました。その直前にインドのコーヒー農園を実際に訪ねまして、地元の人々のために、先進国と対等な生産者を目指すオーナーの熱意により深く共感していました。今まで培ってきた現場を大切にする姿勢を改めて大事にしようと。地元の人々が育てた高品質のコーヒーに、公平な対価を支払って日本に運び、お客様の理解と納得の上で購入していただき、地元生産者にも日本のお客様にも笑顔になってもらう。仲野塾長から学んだ「自分を差し置いてでも、まず誰かのため、社会のためを考える」ことを実践する大きなチャンスであり、やりがいを感じて仕事に取り組んでいる毎日です。これから新しく始めたいことなど、まだまだお話ししたいことはいろいろありますが、いただいた字数がわずかになりました。最後になりますが、私の言葉で仲野塾長を一言でいえば、「無償の愛の人」です。一人の学生が20年近く積み上げてきた考え方や価値観を入塾後ひっくり返すことは、とても難しいし、余程の労力と覚悟がなければできないことと思います。しかし、私は自分の人生において、塾長にお会いしなければできなかった大転換を経験しました。それは塾長が私に強い覚悟をもって、どこまでも真剣に向き合ってくださったことが伝わってきた結果、私が逃げられなくなったからこそ起こった変化だと、今では確信しています。人間塾を修了してずいぶん経ちましたが、私にとって仲野塾長は、これからもいつまでも「一生のメンター」であり続けます。

森内勇登さん(修了生/第2期)