ヤングセミナー

【レポート】人間塾2025年度 人間塾カレッジ第一日目

2025年7月31日

2025年7月20日と21日に、人間塾カレッジを開催いたしました。

これは、塾生が先生になって、自分の専門以外の分野について45分間の授業をするというものです。すでに14年近く続いております。第一日目は6つの授業が行われました。

レポーターは第14期生の岩元美樹です、是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾第14期生 岩元美樹
(津田塾大学2年)

梅雨が明け、夏の暑さが感じられる7月20日、人間塾カレッジ第一日目が開催されました。人間塾カレッジでは、塾生達が大学で専攻している分野以外のことをテーマとして45分間授業を行います。私たち14期生にとっては、5月のお遍路研修に続く大きな行事であり、緊張と期待が入り混じった様子が見られました。オンラインでも多くの方に見ていただき、有意義な時間となりました。

1日目は6つの授業が行われました。

1時間目は第14期生の藤髙君による「静岡に残された家康の足跡〜人質から天下人への道〜」です。彼はご両親が静岡県出身であり、ご祖父母様のお住まいも静岡にあったことから幼い頃から徳川家康ゆかりの地に馴染みがあったそうです。今回はそんな彼が実際に静岡に赴き、教科書には載っていないような視点から徳川家康の青年期、壮年期、晩年期について授業をしました。久能山東照宮に配置されている徳川家の三つ葉葵紋が上下反転して描かれた家紋「逆さ葵」には「完璧なものはいつか崩壊する」という意味が込められていることに、私は驚きました。

人間塾2025年度ヤングセミナー:レゴのお花

レゴのお花

2時間目は第14期生の若林君による「LEGO〜おもちゃを超えたおもちゃ〜」です。世界で親しまれているレゴブロックを製造するレゴ社は、デンマーク語で「よく遊べ」を意味する「Leg Godt」から生まれ、今ではその活用はおもちゃにとどまらず、建築や芸術、そして自閉症児のセラピーとしても使われているそうです。授業の終盤には実際にレゴでお花を作るワークショップがあり、久しぶりにレゴの楽しさを味わうことのできた授業でした。

3時間目は第14期生の中村さんによる「横浜の開発史」です。横浜の開港から現在に至るまでの授業でした。横浜の都市基盤を形成した重要な干拓地である吉田新田は、大雨で一度崩壊しながらも、安全な干拓工法で農地を開発したそうです。「関内」の地名が「外国人居住地に入る際に通る関所」ということに由来していることも知りました。横浜の開発過程を知ることで「おしゃれな港街」だけではない横浜の深い歴史に触れることができました。

人間塾2025年度ヤングセミナー:クイズで場を和ませる

クイズで場を和ませる

4時間目は第14期生の坂本君による「人工知能の未来〜AIをめぐる争い〜」です。進化を続けるAIは人間以上の知能を持つAGI(汎用型人工知能)の開発へと向かっており、世界が先を争うようにその開発を目指して奮起しているそうです。授業では、アメリカが開発した「ChatGPT」と中国が開発した「DeepSeek」を取り上げ、「AIを制した国が次世代の覇権を握る」という視点からのお話でした。日本の熊本県にもAIの進化を支える半導体の工場があることから、この競争が決して他人事でないことを実感できた授業でした。

5時間目は第12期生の佐々木さんによる「イサム・ノグチー石を聴くー」です。私たちの暮らしの中に溶け込んでいる「石」ですが、その種類や形、大きさや色は、石によって異なります。そんな石に対して「自然との調和」「人間とどう関係するか」という視点を持ったイサム・ノグチという芸術家について知るとともに、佐々木さん自身の考察を語ってくださいました。授業では実際に部屋に石を置くことで空間がどう変化するかということを体験しました。石のあるその空間をどう感じるか、というような「空間」に注目しながら石を見たのは初めての体験でした。

人間塾2025年度ヤングセミナー:日本とトルコの関わり

日本とトルコの関わり

この日の最後の授業6時間目は、第13期生の馬部さんによる「エルトゥールル号から現代へと続く日トルコ交流史」です。19世紀末、日本とトルコの友好関係構築を目的として派遣されたエルトゥールル号が和歌山県の串本町沖で台風に遭遇し沈没してしまうという、エルトゥールル号事件が起こりました。この事件でトルコを支援した日本は95年後、その恩返しとしてイラン・イラク戦争で邦人退避のために、トルコ航空の支援を受けることに繋がります。さらにトルコのボスポラス海峡海底トンネルは日本企業との協力によって開通し、2024年には日本とトルコの外交100周年を記念した特別仕様の電車がトルコの地下を走ったそうです。日本とトルコの深い関係を知る授業となりました。

人間塾カレッジ初日は歴史、芸術、時代の先端と教育など、多岐にわたる分野の授業が行われとても充実した時間となりました。普段とは異なる視点から物事を捉えることができ、私自身も大変学びの多い一日でした。授業をするその眼差しからはそれぞれが自分で決めたテーマに向き合い、調査・研究してきた成果を形として見ることができたのが印象的です。人間塾カレッジは明日も続きます。明日はどんな授業が繰り広げられるのかとても楽しみです。



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