講演会

【レポート】人間塾2025年度 第一回目東京講演会

2025年8月5日

2025年7月27日に、塾長による東京講演会第一回目を開催いたしました。対面でのご参加に加え、オンラインでのご参加も多く、にぎやかに講演会を開催することができました。塾生たちも受付をはじめ、随所でお手伝いを申し出てくれ、無事に講演会を終えることができました。

今回のレポーターは、第14期生の坂本周悟です。是非ご一読ください。

塾長・仲野好重

人間塾第14期生 坂本 周悟
(横浜国立大学4年)

7月27日、人間塾・第一回東京講演会が開催されました。今年度の大きなテーマは「風に心を開いて生きる」で、第一回目のタイトルは「帝国主義的野望のゆくえ」です。講演では、帝国主義的思想への鋭い批判を展開した、エドワード・サイードの考察を中心に据えながら、現代においてもなお、帝国主義が無意識のうち刷り込まれていると、塾長は指摘されました。また、物質的な欲望と空虚な精神が支配する現代社会は大きな揺らぎの時に来ており、2024年には「風の時代」へと突入したともいわれています。変化が激しく、既存の価値観が揺らぐこの時代において、私たちはいかにして生きるべきなのかを問う講演会となりました。

人間塾2025年度ヤングセミナー::受付係頑張ります!

受付係頑張ります!

エドワード・サイードは、歴史的に考察を重ねる中で、帝国主義諸国が「東洋」を「西洋」に対する「他者」として創出し、その異質性を強調することで、自らの支配を正当化してきたと論じました。このオリエンタリズムは決して過去の遺物ではなく、現代においても、「イスラム教徒=テロリスト」といったステレオタイプや、アラブ諸国に対する根強い偏見といった形で存続しています。

また言語心理学者であり現役の政治評論家でもあるノーム・チョムスキーが指摘した「マニュファクチュアリング・コンセント」は、現代アメリカの政治体制を読み解く鍵となります。これは、メディアなどを通じて国家に都合の良い情報が選択的に流され、世論が特定の方向へ導かれる状況を指します。その典型例のひとつが、アメリカにおけるイスラエル支持の姿勢です。イスラエル建国を支持するシオニストは、必ずしも熱心なユダヤ教徒であるとは限りません。実際、ユダヤ教の聖職者や宗教学者、さらには良識あるユダヤ人の学者や文化人の中には、イスラエル建国やその政策に対して批判的な立場を取る人々が存在します。

しかし、こうした声はアメリカのメディアでは取り上げられず、報道されることがありません。このようにしてマニュファクチュアリング・コンセントのもと、情報へのアクセスが限られた市民は無知な状態に置かれ、社会の分断はより一層深まります。そして皮肉なことに、民主主義の理念に基づいた「支援」という大義名分を掲げながら、実質的な帝国的支配が強化されていくのです。このアメリカが、自らを世界の民主主義警察として振る舞う現状は、かつてローマ帝国が国外領土に自国の法を執行していた姿に重なります。

現代は「土の時代」の終焉を迎え、「風の時代」へと移行したとも言われます。これは占星学的な概念で、目に見えるもの(金、物質、所有)から、目に見えないもの(自由、価値観、多様性、情報)へと中心となる軸が移ったということを指します。しかし、その「目に見えない価値」さえも、今は歪められ、情報操作や価値観の画一化が進んでいます。だからこそ、私たちはいま一度、権力構造を問い直し、社会がより公正であるために、市民一人ひとりが何を選び、どう生きるかを考える必要があるのです。

人間塾2025年度ヤングセミナー:力説する仲野塾長

力説する仲野塾長

この「風の時代」を生きるために、私たちに求められているのは、変化を受け入れ、目に見えるものだけに縛られず、目に見えない精神的な豊かさ(知識、経験、人とのご縁など)を追求すること、そして自分自身の軸を見つめ直し、自分らしさを失わないことです。どのような環境に置かれても、自分の内側にある確かな価値を見失わず、偏りにとらわれないしなやかなバランス感覚が、風の時代を生きる鍵になります。

資本、政治、宗教、そして情報の力が複雑に絡み合う現代において、何を信じ、どう生きるかは、私たち一人ひとりに委ねられているのです。今回の講演会は、そうした問いに向き合い、「風の時代」にふさわしい、しなやかな生き方とは何かを考える貴重な時間となりました。



2021年スペシャル企画!『人間塾と私』塾生・修了生インタビュー 2023年 塾長講演会音声記録
トップ
トップ